自然災害リスクを調べる:アパートの引っ越しを想定して

【更新履歴】
・「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」公開に伴い加筆(2020年12月18日)
 
以前の記事では、国土交通省の「重ねるハザードマップ」の利用方法を中心に、自然災害関連の情報を調べる方法を紹介しました。今回は、アパートの引っ越しを想定して、自然災害リスクの低い地域を探す方法を紹介します。
 
基本戦略としては、地震動・液状化津波・高潮・土砂災害・洪水の危険性を考慮して、なるべく低地は避けて地盤の強固な場所を見つけるという方針です。しかし実際には、そうした土地は家賃が高かったり利便性が悪かったりもするので、リスクと便益のバランスをとることは大事です。どういう種類の災害にどの程度のリスクを許容できるかは、自分や周囲の環境に大きく依存します。自分の生活や体調、家族構成等を考えて、災害に対して身を守ることが可能かどうかをよく検討すべきです。
 
土地の特徴をおおまかに把握する
まず、「重ねるハザードマップ」を活用して、複数の地域の土地の特性を調べます。使い方については、以前の記事を参考にしてください。

 
「重ねるハザードマップ」で表示できる情報ごとに、どういった土地にリスクがあるかを考えてみます。
 
・「災害種別で選択」>「土砂災害」
 ここで塗りつぶされる地域は、特にリスクがあると認識されている場所です。特に、「急斜面崩壊危険箇所」は危険が大きいと言えます。地震で崩れるのを前もって知ることはできません。もしそこに住みたい場合、十分対策が施されているかどうかを調べるべきでしょう。
 
・「災害種別で選択」>「津波」および「洪水」
 ここで塗りつぶされる地域は、特にリスクがあると認識されている場所です。こうした場所に住む場合、命を守る対策を十分にとり、かつ家財等の流出の可能性を考慮すべきでしょう。なお、想定浸水範囲に含まれていなくても、少なくともその近辺では同様の心構えでいたほうがよいでしょう。
 
・「すべての情報から選択」>「土地の特徴・成り立ち」>「地形分類」
 表示した上で任意の地点をクリックすると、その場所で想定される地形の自然災害リスクが表示されます。一般的には、台地・段丘の上が最もリスクが低いと思われます。地形と自然災害の関係については、国土地理院の解説があります。
 
・「すべての情報から選択」>「土地の特徴・成り立ち」>「大規模盛土造成地」
 阪神・淡路大震災東日本大震災等の大規模地震時において、谷や沢を埋めたり、傾斜地盤上に盛土した大規模な造成宅地において、盛土の崩壊や地すべりによる被害が発生しました(「大規模盛土造成地」の解説より引用)。したがって、該当する土地はリスクが高いと言えます。
 
・「すべての情報から選択」>「土地の特徴・成り立ち」>地形区分に基づく液状化の発生傾向図
 液状化の発生しやすさを確認できます。「地形分類」データが整備されていない場所もカバーされているようですが、おそらく精度は落ちていると思われます。
最新の自然災害関連情報を把握する
土地の特徴をおおまかに把握すると、住みたい土地がある程度絞られるかもしれません。その後は、市町村のハザードマップで、最新の情報を確認します。地域によっては、「重ねるハザードマップ」に掲載されているよりも、詳細な地震動や液状化などのハザードマップを公開していることもあります。*1
 
「重ねるハザードマップ」の地図画面の右端にある「危」マークを選択し、任意の地点をクリックすると、該当地域の「わがまちハザードマップ」へのリンクがあるので、移動して情報を確認することができます。
さいごに
今回はアパートの引っ越しを想定しましたが、もし土地やマンションを買うのであれば、古地図や空中写真をもとに、土地の履歴をより詳細に把握するのも良いと思います。最終的にはピンポイントに地盤の強度を知らべたほうが良いのかもしれません。ジャパンホームシールド株式会社の地盤サポートマップを見ると分かるように、近距離でも地盤の強度はかなり異なります。
 
紹介した方法の利用は自己責任でお願いします。ご意見やご指摘は歓迎いたします。

*1:地震動や津波においては都道府県の想定よりも古いものである場合もあります。不安であれば都道府県が公開している防災情報も参考にしてもよいでしょう。ただし、地震動に関しては、より良い地盤を選べば被害も小さくなるので、引っ越し時に気にしすぎることはないと思います。